お知らせ

「欧州獣医学教育機関協会(EAEVE)の国際認証取得」報告記者会見を開催いたしました。

写真中央・左:佐野輝学長 右:宮本篤学部長、写真・右端:三好宣彰副学部長 左端:有村卓朗獣医学教育改革室長

南日本新聞:2019年(令和元年)12月17日 火曜日 20面 「社会」掲載(全文転載:裁許)

【報告記者会見のポイント】
・欧州獣医学教育機関協会(EAEVE)の国際認証を取得いたしました。
・この認証の取得は日本のみならずアジアで初めてとなります。
・これにより鹿児島から世界に通用する人材の育成に弾みが付きます。

2019年12月11日、鹿児島大学及び山口大学の共同獣医学部は、欧州獣医学教育機関協会(*EAEVE; European Association of Establishments for Veterinary Education)の獣医学教育国際認証を取得しました。この取り組みは、文部科学省による国立大学改革強化推進補助金「国立獣医系4大学群による欧米水準の獣医学教育実施に向けた連携体制の構築」(帯広畜産大学・北海道大学・山口大学・鹿児島大学)の支援のもとで行われたもので、この認証取得は日本初であり、かつアジアの獣医学高等教育機関でも初めてとなります。同日、北海道大学、帯広畜産大学もEAEVEによる認証を取得いたしました。

eaeve

*EAEVE:欧州の獣医学高等教育機関(獣医系大学)による共同運営の協会で、1)卒業する獣医師と行われている獣医療サービスは信頼できるか、2)学生の受ける教育が一定の水準に到達しているか、3)教育カリキュラムや施設設備が定められた基準に合致しているか、について公的な組織として認証評価を行う。EAEVEメンバー校はヨーロッパを中心に計38ヵ国にまたがり、認証取得機関は75におよぶ(2019年12月現在)。

【背景】 近年のグローバル化の流れの中で、越境性感染症などに対する防疫需要の増大や輸入検疫の厳密化、またはイヌ・ネコなどの小動物やウシ・ブタなどの大動物における獣医療の高度化や細分化に対する社会のニーズが高まっています。その結果、獣医学教育についても国際水準化の必要性が増しており、北米では米国獣医師会(AVMA; American Veterinary Medical Association)、また欧州ではEAEVEによる獣医学教育認証の取得を以って、教育の質の担保を行うのが一般化されています。一方、アジア圏においては国際基準に基づく認証評価制度が存在しないため、そのような世界の潮流から立ち遅れているのが現状でした。鹿児島大学では、そういった状況を改善し日本における獣医学教育改革の先鞭を付けるために、国際水準の教育の学生への提供とグローバル人材の育成を目的として10年前から獣医学教育の改革に着手し、2012年に山口大学と共同獣医学部を設立するなど、獣医学教育に関わるあらゆる事項の改善をハード・ソフトの両面から行ってきました。こういった教育改革への外部評価の指標として我々が掲げてきたのが、EAEVE国際認証の取得です。

【概要】 上記補助金を基盤に、2013年から欧州における獣医学教育のトップ校を多数視察し、ヨーロッパにおける獣医学教育と我々日本の現状の比較を行い、日本の獣医学教育の欠陥部分を認識すると共に、2014年からEAEVE認証評価の専門家を毎年鹿児島に招き、学部運営組織、財政、教育カリキュラム、施設設備、(動物や図書などの)教育学習資源、入試・進級と学生生活、学生評価(成績)、スタッフ、研究と卒後教育、及びそれらの成果評価と品質保証システムについて、欧州基準に準拠した評価を受け改善点を指摘してもらいました。事業当初は欧州基準カリキュラムへの対応不足や学内・学外の実習施設の不備、実際に学生が手を下して行う実習の質と量の不足、さらには臨床実習に供与する動物数の不足などといった多岐に渡る欠陥事項の指摘を受け、欧州基準必須項目の40%しか達成できていなかったことから、全基準項目で欧州のレベルに到達するために、カリキュラムの改変、動物病院の新築や24時間診療の開始、協定の締結による学外実習施設の拠点整備、及び多種多様な動物を用いた臨床実習の拡充など、先進的かつ持続的な教育改革を行ってきました。2017年の10月に公式な事前審査を受けてさらなる改善を行い、本年6月に本審査を受審しました。その結果、先週の12月11日にオーストリアのウィーンで開催された欧州獣医学教育委員会の会議で、全90項目の欧州基準に100%到達していると認められ、このたびEAEVE認証取得の運びとなりました。なお、この認証は7年間有効であり、今回の認証取得期間は2019年6月から2026年6月までとなります。

【意義】 国際的な公的認証機関から国際水準の教育を行っているとのお墨付きを得たこととなり、世界に通用する人材の育成に弾みが付くと同時に、昨今国際的にボーダーレス化が進んでいる疾病の制御や食の安全に関わる獣医師の育成機関として、アジアにおけるリーダー校としての責務が生じることとなります。さらに日本有数の畜産地帯である鹿児島の地域特性を生かした欧州基準の獣医学教育プログラムの開発によって、地域の活性化や獣医療水準の向上にも大きく貢献することができます。

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