学部の概要

学部長メッセージ

共同獣医学部長 遠藤 泰之

共同獣医学部へようこそ

鹿児島大学共同獣医学部は、社会からの要望や獣医師としての国際的通用性、さらなる地域貢献、ならびに多岐にわたる獣医師の活躍の場に対応すべく、2012年に山口大学との共同教育課程を組む、鹿児島大学においては9番目の学部、我が国では初となる共同学部として発足しました。

共同獣医学部における獣医学教育に関しては、2019年4月に第三者評価機関である大学基準協会による獣医学教育認証を共同獣医学部として取得し、さらに6月には、欧州獣医学教育機関協会(European Association of Establishments for Veterinary Education: EAEVE)による公式最終審査を受審し、アジア地域においては初となる完全認証を受けています。この国際的な獣医学教育機関においては、すべての動物種とすべての獣医業務に関する教育が、すべての学生に対して実施されることが義務付けられていますが、鹿児島大学共同獣医学部はこれを実践できる我が国では数少ない獣医学教育機関の一つとなっています。鹿児島大学共同獣医学部は、日本有数の畜産地帯である鹿児島県に位置しているだけでなく、約60万人が暮らす鹿児島市の中心部にも近く、また希少野生動物の暮らす南西諸島にもアクセスしやすい、非常に恵まれた立地条件のもとに存在し、ここで学ぶ学生は獣医師となるために接しておかなければならない牛や豚、鶏といった産業動物、犬や猫のような伴侶動物、ならびに種々の野生動物に触れる機会を多く有しているというアドバンテージを持っています。一方、我が国で獣医師となるためには、獣医師免許を取得する必要があり、国家試験に合格することが必要です。ただしこの国家資格はあくまで国内で通用するものであり、それ自体は国際的通用性を有するものではありません。しかしEAEVEによる完全認証を受けた共同獣医学部で教育を受けた卒業生は、海外でも獣医師として活躍できる可能性を有しており、実際に2020年ならびに2024年の獣医学科卒業生が英国における獣医師としての資格取得に至ったことは特筆すべきことだと思います。

前述のように鹿児島大学共同獣医学部は、畜産地帯である鹿児島県に位置していますが、2024年度から共同獣医学部の新たな学科として畜産学科が設置されました。「畜産学」と「獣医学」は、産業動物、伴侶動物、野生動物等を対象とする動物科学であり、お互いに密接な関わり合いを持っています。近年は、ヒトと動物の健康とそれらを取り巻く地球環境を一つの学問領域として捉えるOne World・One Health(OWOH)という概念が浸透していますが、畜産学に関しても、動物福祉と地球環境に配慮した飼養管理、育種改良と繁殖を実践し、良質な畜産物や加工品を安全かつ安定的に供給する、といったことが我々の食と豊かな生活の構築に貢献するという点でつながっています。畜産の盛んなこの鹿児島において、OWOHの概念のもと畜産業を支えていく畜産技術者を養成していきたいと考えています。

この鹿児島という九州最南端の地に、獣医学と畜産学を柱とする動物科学を実践する拠点が、鹿児島大学共同獣医学部という形で大きく発展しつつあります。OWOHの概念を実践できる獣医師、ならびに畜産技術者の養成に関する教育改善に終わりはありませんが、我が国ならびに世界も見据えた人材を輩出できるような学部となるよう取り組んで行きたいと思います。

共同獣医学部長 遠藤 泰之