研究テーマ
インフルエンザウイルス人工合成技術の改良と応用
遺伝子工学技術の目覚ましい発展により,感染性・増殖性・病原性を保持した様々なウイルスの人工合成が可能になりました。他のウイルスに先駆けて確立されたインフルエンザウイルスの人工合成技術は,研究ツールとしての効率性や利便性のほか,臨床応用への実用性も積極的に研究されてきました。当研究室でも,この技術の改良や応用に取り組んでいます。
野鳥を対象とした鳥インフルエンザサーベイランス
近年の養鶏産業において最大の脅威である高病原性鳥インフルエンザウイルスは,カモ類などの野生水禽類の間で感染と流行が繰り返され,野鳥の長距離移動に伴って拡散します。当研究室では,絶滅危惧ツル類が越冬する鹿児島県出水平野の環境試料や野鳥死亡個体を対象に,ウイルスの浸潤状況や流行株の遺伝的特性を調べています。
豚インフルエンザウイルス国内流行株の性状解析
豚インフルエンザウイルスは,ブタの健康被害の要因となるだけでなく,ヒトへ伝播して人獣共通感染症を引き起こす恐れもあります。そのため畜産衛生と公衆衛生の両面で重要な病原体と位置づけられ,その特性の解明や制御方法の確立は社会的命題の一つです。当研究室では,ウイルス人工合成技術などを駆使しながら,国内流行株の性状解析を進めています。
産業動物におけるウイルス感染症研究
産業動物の感染症は,当該動物の健康被害や生産農家の経済的損失だけでなく,生産物の価格高騰や供給量減少に伴って消費者の混乱や不安も引き起こす影響力の大きなリスク要因です。当研究室では,インフルエンザ研究で培った分子生物学的な技術や知識を活かし,産業動物における様々なウイルス感染症の研究に取り組んでいます。
- 主な学術論文
- 牛呼吸器合胞体ウイルス国内流行株の遺伝的性状
- 豚流行性下痢(PED)ウイルス国内分離株の遺伝的特性
- 関連特許
- 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスの分離に適した新規細胞株およびその樹立法
野生動物におけるウイルス感染症研究
野生動物で流行する感染症は,当該動物種だけでなく,ヒトや産業動物,周囲で生息する他の野生動物にも健康被害を引き起こす恐れがあるため,社会的に重要な研究課題です。しかし野生動物の感染症研究の制約が多く,進展が遅れています。当研究室では,行政機関などと連携し,野生動物におけるウイルスの感染・流行動態の解明を進めています。
スマート畜産技術の開発・普及
労働力確保や生産性向上など国内畜産業が直面する多くの課題の解決策として,ICT(情報通信技術),AI(人工知能),ロボット技術などの先端技術に大きな期待が寄せられています。当研究室は,企業や生産者と連携しながら,肉用鶏生産と養豚生産を対象とする『スマート畜産技術』の開発と,これら新技術の生産現場における普及を推進しています。