歯周病は犬と猫で最も多いお口の病気です
犬猫とも一番多い歯の病気は歯周病です。一方、人に多いむし歯(齲蝕)は犬では少なく、猫ではむし歯はありません。「うちの子、歯が黒くてむし歯じゃないかしら?」とおっしゃられる飼い主さんが多いですが、そのほとんどが歯周病です。歯周病は、歯の周りの病気であり、歯をささえる骨や歯ぐきなどが溶けて、最終的に歯を失う病気です(写真1)。歯周病がひどくなることで小型犬では頬の部分が腫れて穴があいたり(写真2)、顎が折れたり(写真3・4)することがあります。




このように、歯周病を重篤化させないためには、自宅でのデンタルケア、病院でのこまめな口腔内のチェック、歯肉炎、歯周炎がある場合には、歯石除去や歯周外科治療が必要です。
歯の病気は放っておいても自然に良くなることはありません。お口のことで気になることがある場合はかかりつけ医さんにご相談ください。
また、高齢だから全身麻酔がかけられないとの相談がよくありますが、「高齢であること=病気」ではありません。術前検査をしっかり行うことで安全に麻酔がかけられることが多いです。大学には麻酔を専門とする先生もいます。お困りの場合はご相談ください。
口腔内腫瘍も高齢の犬、猫に多い病気です
口臭がひどくなった、硬いものを食べなくなった、体重が減っている、口から出血するなどの症状は口腔内の腫瘍の兆候かもしれません。口腔内腫瘍は悪性であることも多く、命に関わることもあり、早めの発見と診断、治療が重要です。高齢の犬猫は口腔内の観察を定期的に行い、気になることがあれば、かかりつけ医に早めに相談しましょう。かかりつけの先生方も診断や治療に迷われた際は遠慮なくご相談ください。


いずれの症例も上顎骨を含めた腫瘍の切除手術を行い、良好な経過を得ました。
手術について
歯科の口腔外科手術は、動物の痛みや恐怖をコントロールするため基本的に全身麻酔下で行います。
全身状態を把握し、その子に合った負担の少ない麻酔薬を選択し、術中は血圧や心拍数、体温などをモニターしながら処置を行います。
歯や骨を切削したり、口の中の水の吸引、スケーリング機能のある動物用歯科ユニットと歯科デジタルレントゲンを用い、必要であればCT検査も併用しながら、診断と治療を行います。

麻酔モニターを行いながら処置をすすめます

正しい診断と治療のためには、
歯科レントゲン検査は必須の検査です
治療は、症状・疾患に応じて下記のとおり多岐にわたり、その子にとって最良の治療を、飼い主さんとご相談しながら進めていきます。
歯の破折(歯が折れること)に対しての神経の治療


神経を抜いて洗浄・消毒し詰め物をしていきます
矯正治療

乳歯がたくさん残り、下顎の永久犬歯が内側に入っています

乳歯の抜歯と下顎犬歯の矯正を行いました
顎骨切除

腫瘍は完全切除でき、外貌の変化や摂食機能への
影響はほとんど認められませんでした。
顎骨骨折整復


犬歯の生活歯髄切断術

なんども人を噛んでしまうとのことで、上顎と下顎の犬歯の切断を行いました。切断面の神経の処理を行い、コンポジットレジンによるかぶせ物をしています。
猫の歯肉口内炎に対しての全臼歯・全顎抜歯


口腔内の発赤腫張が引き、痛みが軽減しました。
大学での歯垢歯石除去の流れ
歯科の治療は、歯科レントゲンや専門的な器具を必要とすることも多くあります。 気になる症状や異常を見つけた際は早めにご相談ください。
全身麻酔下で歯の状態、歯周ポケット、歯ぐき、
歯をささえる骨の状態をチェックします。

超音波スケーラーで冷却水を出しながら歯の見えている部分の歯石除去をします。(スケーリング)

キュレットスケーラ−で歯周ポケット内の歯石を除去し、歯根面を滑沢化します。
(ルートプレーニング)

やや粗めの研磨剤(緑)を使って、
ポリッシングブラシで歯の表面の研磨をします。

ご契約
プラン、資金面など全て十分に打ち合わせし、納得した上で本契約となります。

炎症がある部位やポケットの深い部位には、
徐放性の歯科用抗生物質軟膏を貼薬します。

スケーリング終了です。歯周ポケットが深い部分がある場合は歯科用レントゲンを撮影し、周りの骨の溶け方や、根尖周囲病巣(歯根先端周囲の炎症や骨吸収)がないかを確認し、あればさらに抜歯などの治療をおこないます。

歯科の治療は、歯科レントゲンや専門的な器具を必要とすることも多くあります。
気になる症状や異常を見つけた際は早めにご相談ください。