台湾で、イタチアナグマから分離された密かに循環してきた狂犬病ウイルスの分子学的特徴

Molecular Characterization of Cryptically Circulating Rabies Virus from Ferret Badgers, Taiwan

Emerging Infectious Diseases, Volume 20, Number 5—May 2014

Hue-Ying Chiou, Chia-Hung Hsieh, Chian-Ren Jeng, Fang-Tse Chan, Hurng-Yi Wang, and Victor Fei Pang

(仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六

 

要旨

1959年にヒト、1961年に動物で報告された最後の狂犬病症例以降、台湾は狂犬病清浄と考えられてきた。しかしながら、20122013年の間に、台湾でイタチアナグマにおいて発生した。このウイルス株の起源を調べるため、我々は3株の完全な遺伝子配列を読み取り、多数の狂犬病ウイルス(RABV)の核タンパクと糖タンパクの配列を得た。系統学的解析によって、台湾イタチアナグマに感染したウイルス株(RABV-TWFB)がアジア系統グループの中で独特な系統であり、最も近縁のChina I(中国イタチアナグマからの分離株を含む)系統およびフィリピン系統から158210年前に分化してきたものであることを証明した。RABV-TWFBの最も近接する共通の祖先は91113年前に遡る。我々の知見は、RABVが環境中で密かに循環してきた可能性を示している。基本的な仕組みを理解することは、RABVと宿主の間の複雑な県連性に光を当てるかも知れない。

 

緒言

狂犬病は、おそらく最も古い人獣共通感染症の一つである。それはLyssavirusRhabdoviridae科の神経親和性ウイルスである狂犬病ウイルス(RABV)によって引起される。少数の国と地域、とくに島嶼を除いて、RABVは世界中で見つかる。このウイルスは、ほとんど全ての温血動物に感染し、重度の神経症状を引起し、ほぼ不可避的に死に導く(1)2010年に全世界で6万人以上の死亡を引起したと推定され、その大半はアフリカとアジアであった(2)。発展途上国においてはイヌがRABVの主要な宿主と考えられているが、このウイルスは野生の肉食獣と翼手目の多くの種にも広がっており、適切に確立された予防接種計画がある欧州と北米の国々においてはとくにそうである(3)。イタチ科(weasel)のイタチアナグマ属(Melogale)、アナグマ属(Meles)、ラーテル属(Mellivora)を含むイタチ科Mustelids)はRABVを保有し得る(4–6).。中国南東部において、中国イタチアナグマ(CNFB; Melogale moschata moschata)は長年に亘ってヒトの狂犬病と関連してきており、この地域における保有宿主と考えられている(7–9)

1959年と1961年にそれぞれ報告されたヒトと動物における最後の狂犬病症例と考えられてきた後で、台湾は20122013年のイタチアナグマの狂犬病の発生まで50年以上狂犬病清浄であった。20125月〜20131月の間に、車両によって轢死したか、野生動物応急処置所で怪我や病気の治療を受けた野生動物についての政府による日常的発生動向調査を通して、3頭の死亡した台湾イタチアナグマ(TWFB; M. moschata subaurantiaca)が国立台湾大学獣医学部にさらなる検査のため提供された。

病理検査によって、3頭とも好酸性細胞質内封入体がある非化膿性髄膜脳脊髄炎と判明した。逆転写PCRと免疫組織化学染色によって、イヌジステンパーウイルス感染の可能性が排除された。ただし、蛍光抗体法、免疫組織化学染色およびRABV塩基配列解読を含む逆転写PCRの結果は、陽性であった(H.-Y. Chiouの未発表データ)。最初の3頭のイタチアナグマの狂犬病診断が確認された後、20138月末までに、さらに105頭の死亡または病気で安楽死させたイタチアナグマと1匹のトガリネズミ(shrew)が蛍光抗体法によって狂犬病と診断された。

本研究の目的は、台湾イタチアナグマ(TWFB)が関連する狂犬病の現在の流行が、新たに発生したか、再興なのか、それとも密かに循環していたのかを明らかにすることであった。我々は、RABV-TWFBの遺伝子構成と特徴ならびに遺伝学的多様性と系統学的起源の解析を通して、この流行の由来の化膿性および中国本土における中国イタチアナグマ(CNFB)の狂犬病との関連性を調べた。それに加えて、RABV-TWFBの限定的な宿主範囲に寄与している可能性がある仕組みを提案する。

 

材料と方法(省略)

 

結果(図表のみ)

Collection sites of rabies-positive Taiwan ferret badgers (TWFB), Taiwan. Solid circles marked with 1–3 represent the collection sites of the first 3 rabies-positive animals. Triangles represent the collection sites of other rabies virus (RABV) sequences included in this study. Crosses represent the most diverged lineages of rabies virus from Taiwan ferret badgers (TWFB, TW1614, and TW1955), shown in Figure 5, panel B, Appendix, and the easternmost cross represents the isolate from a shrew, TW19

1.狂犬病陽性の台湾イタチアナグマ(TWFB)の捕獲場所

塗潰し円は、最初の3頭の狂犬病陽性動物の捕獲場所を示す。三角は、本研究に含まれるその他の狂犬病ウイルス(RABV)塩基配列の由来場所を示す。十字は、図5panel BAppendixに示した台湾イタチアナグマ(TWFB, TW1614TW1955)の狂犬病ウイルスの最も離れた系統を示し、最東の十字はトガリネズミTW1955分離株を示す。

 

 

Phylogenetic relationships of 27 rabies virus (RABV) genomes constructed by maximum-likelihood method. Numbers close to the nodes were from 1,000 bootstrap replications. The tree was rooted with RABV from bats and raccoons. Three major groups, Asia, Cosmopolitan, and India, are strongly supported, as indicated (17). There are 4 major lineages within the group from Asia, including previously recognized China I, China II (16), Southeast Asia, and RABV from Taiwan ferret badgers (TWFB). RABVs deriv

2.最大尤度法によって構成された27株の狂犬病ウイルス(RABV)遺伝子の系統学的関係

交点近くの数字は、1,000ブートストラップ複製による。樹状図は、コウモリとアライグマのRABVに準拠した。文献(17)に示されたと同様に、AsiaCosmopolitanおよびIndia3つの主なグループが強く支持された。文献(16)でこれまでに認められていたChina IChina IISoutheast Asiaおよび台湾イタチアナグマ(TWFB)を含め、Asiaグループ内に4つの主な系統がある。中国イタチアナグマ(CNFB)由来株はChina Iとクラスターを形成し、TWFBCNFBからのウイルスが異なる起源を持つことを示している。スケールは、部位あたりのヌクレオチド置換を示す。

 

Sliding window analysis of rabies virus (RABV) genetic variations between Taiwan ferret badgers and China I, China II, and Chinese ferret badgers (CNFB). The genomic organization of RABV is shown at the bottom with nucleotide positions on the x-axis. The thick horizontal lines indicate conserved regions across lyssaviruses. N, nucleoprotein; P, phosphoprotein; M, matrix protein; G, glycoprotein; L, virion-associated RNA polymerase.

3.台湾イタチアナグマ(TWFB)とChina IChina IIおよび中国イタチアナグマ(CNFB)との間のウイルスの遺伝学的多様性のSliding window解析

狂犬病ウイルスの遺伝子構成は、x軸下部に示した。N:核タンパク、P:リンタンパク、M:マトリックスタンパク、G:糖タンパク、L:ビリオンと関連するRNAポリメラーゼ。薄い水平線は、lyssavirusesに共通の保存領域を示す。

 

 

4.核タンパク(A)および糖タンパク(B)をコードする遺伝子の配列に基づく主な狂犬病ウイルスの系統学的関係

この樹状図は、一般的な時間的可逆性ヌクレオチド置換モデルに基づく最大尤度法によって構築された。交点に近い数字は、1,00ブートストラップ複製による。主なクレード(分岐群)の定義は、文献(16)(17)に基づく。スケールは、部位あたりのヌクレオチド置換を示す。

 

5.核タンパク(A)と糖タンパク(B)をコードする遺伝子の配列に基づく狂犬病ウイルスの最大尤度樹状図

分岐点の数字は、推定された相違(上)とその95%最高事後密度区highest posterior density、下)である。異なるウイルス系統間の相違時間および分離株の最も近接する共通の祖先までの時間は、確立されたBayesian Markov chain Monte Carlo法を用いてBEAST version 1.7で推定した(21)。置換率は、核タンパク(N)遺伝子については、4.3 × 10–4(範囲3.16.6 × 10–4)または2.3 × 10–4(範囲1.1–3.6 × 10–4/部位/年(出現数)、糖タンパク(G)遺伝子については、3.9 × 10–4(範囲1.2–6.5 × 10–4/部位/年(出現数)と推定された(17,23)。解析は、無相関の対数正規分布分子時計を仮定して(22)、ヌクレオチド置換の置換率時間的可逆性ヌクレオチド置換モデルを用いて行われた。

 

 

TW1955は、同じ地域で採取されたTW1614ときわめて近似するトガリネズミから分離された唯一の株であり、TW1955がイタチアナグマから溢れ出たことを示唆している(図1参照)。スケールは、部位当りヌクレオチド置換を示している。

(つづく 2014/6/26

 

1.狂犬病ウイルス遺伝子の増幅と塩基配列解析に用いたプライマー*

プライマー

5′→3′の配列

Amplicon size, nt

部位, nt

3F

3R

NF

NR

PF

PR

MF

PR

 

GTACCTAGACGCTTAACAAC

AAGACCGACTAAGGACGCAT

ATGTAACACCTCTACAATGG

CAGTCTCYTCNGCCATCT

GAACCAYCCCAAAYATGAG

TTCATTTTRTYAGTGGTGTTGC

AAAAACRGGCAACACCACT

TTCATTTTRTYAGTGGTGTTGC

以下省略

499

 

1,533

 

1,001

 

641

 

1–499

 

55–1587

 

1500–2500

 

1500–2500

 

*プライマーは、文献(10)による。

訳注長い遺伝子の塩基配列を調べるために、重なりを設けながら数百塩基ごとを増幅する(部位に注目)。

 

 

2.台湾株とその他のアジア系統狂犬病ウイルスの末端および中間の遺伝子の構成とヌクレオチドの長さ*

3-UTR

N

N-P

P

P-M

M

M-G

G

G-L

L

5-UTR

遺伝子

TWFB

70

1,353

91

894

86

609

212

1,575

519

6.384

130

11,923

CNFB

70

1,353

91

894

86

609

211

1,575

519

6.384

130-131

11,922-

11,923

China I†

70

1,353

90-

91

894

87-

88

609

211

1,575

519

6.384

130

11,923

China II†

70

1,353

91

894

87

609

211

1,575

518-

519

6.384

131

11,923-

11,924

UTR:非翻訳領域、TWFB:台湾イタチアナグマ、CNFB中国イタチアナグマ。

†:China IChina II の定義は文献(16)による。China ICNFBは含まれない。

 

 

3.台湾分離株と様々な地域の狂犬病ウイルス系統・グループとの間の遺伝学的距離*

N

P

M

G

L

遺伝子

アジア

 

 

 

 

 

 

CNFB

0.115

0.172

0.105

0.129

0.130

0.134

China I‡

0.104

0.157

0.107

0.133

0.123

0.127

China II

0.130

0.186

0.132

0.172

0.142

0.152

Southeast

Asia

0.140

0.189

0.125

0.169

0.147

0.155

Cosmopolitan

0.161

0.216

0.173

0.209

0.177

0.192

India

0.152

0.229

0.183

0.211

0.175

0.191

Outgroup

0.200

0.284

0.212

0.237

0.209

0.232

*CNFB:中国イタチアナグマ、outgroup:コウモリとアライグマ由来株。

†:狂犬病ウイルスのグループは文献(17)に基づく。

‡:この解析において、China ICNFBを含まない。

 

4TWFBCNFBおよびフィリピン由来株のヌクレオチドの多様性*

遺伝子

長さ

サンプル数

Π, %

Tajima D

Fu and Li D*

TWFB

N

1,335

11

3.14

−0.886

0.735

G

1,575

12

4.21

-0.264

0.740

CNFB

N

1,350

12

0.67

−1.294†

−1.918†

G

1,575

14

0.87

−1.168†

−1.336†

フィリピン

N

1,124

65

2.00

−1.380†

−1.759†

G

1,575

232

2.57

−1.676†

−3.80

*TWFB:台湾イタチアナグマ、CNFB:中国イタチアナグマ

p<0.05、 ‡p<0.01

 

考察

台湾イタチアナグマ由来株(RABV-TWFB)の祖先

我々は台湾イタチアナグマから最近分離されたRABV-TWFB株の塩基配列を読み取って特徴付けした。我々のデータは、RABV-TWFBがフィリピン株、China I株および中国イタチアナグマ由来株(RABV-CNFB)の配列とクラスターを形成することを示した。このことは、N遺伝子とG遺伝子、ならびに全遺伝子の多数の配列を基に強く裏付けられた(図2、図4、表)。イタチアナグマ由来株の中で、RABV-TWFBRABV-CNFBは系統発生学的に区別される系統に由来し、この動物種において複数のRABVが定着する出来事が起きたことを示している。この研究において取り組んだ主な疑問は、RABVが台湾イタチアナグマ(TWFB)に最近浸潤したのか、それとも、その昔初めて浸潤した後病原性を示すことなくTWFBに長く留まっていたのかであった。我々の分岐年代測定は、このRABVがおよそ100年間 TWFBの間で循環していたことを示した。

分岐と「最も近接する共通祖先の年代(TMRCA)」の推定は、多少の誤差を含んでいる可能性がある。第一に、台湾のRABV株は、複数のウイルス系統が近接する過去に発生したこと、ならびに様々な高度に分化したウイルス株の組合せによって誇張されたTMRCAができたことの可能性を含め、いくつかの浸潤の出来事に由来する可能性がある。それにもかかわらず、台湾の全ての分離株は、その他の分離株とは区別される単一系統を形成した。台湾で検出されていない複数のウイルス株が循環していない限り、それはきわめてありそうもないことであり、系統発生学的解析はRABV-TWFBの単一の起源の存在を裏付けている。

第二に、祖先の推定は、不適切な分子時計の適用の結果である可能性がある。ただし、ここで報告したN遺伝子とG遺伝子についてそれぞれ用いた2.34.3 × 10–43.9 ×10–4/部位/年のヌクレオチド置換(変異)率は、lyssavirusの発生に関する多くの研究の知見に基づくものである(17,23,32,34,35)。コウモリのRABVに関する研究において、Streicker(34)は、様々なコウモリ種のウイルス系統の中の主要な不顕性の置換である第3コドンの置換率が8.3 × 10–52.1 × 10–3/部位/年に分布していることを見つけている。N遺伝子とG遺伝子の第3コドンについての1.1 × 10–37.8 × 10–4/部位/年の我々の推定は、推定の上限内にあった。したがって、我々の成績は科学的慣行に一致している。

第三に、RABV-TWFBN遺伝子とG遺伝子にヌクレオチドの高度の多様性を持っている。注目すべきは、フィリピンの広範な地域から集めた232 G遺伝子の配列はRABV-TWFBのヌクレオチドの多様性の3分の2であった。これらを総合すると、現在の全ての遺伝学的証拠は、RABV-TWFBの祖先の仮説を裏付ける。それに加えて、RABV-TWFBは長期に亘って大きな集団で維持されてきた。

最後に、様々な研究機関から提供されたイタチアナグマのホルマリン固定またはパラフィン埋め込み保存脳組織を用いた我々の最近の遡及的研究は、現在の台湾イタチアナグマが関連するRABV感染が、これまでに提供された最も古い標本である2004年まで遡ることができることが証明された(H.-Y. Chiouの未発表データ)。この知見は、台湾におけるRABV-TWFBの長い歴史の考え方と一致する。

 

RABV-TWFBG遺伝子における変異

RABV-TWFBの祖先の歴史は2つの問題を提起する。第一に、過去50年間台湾は狂犬病清浄と信じられてきたことから、このウイルスがそのような長い期間に亘って環境中で密かに循環していたことを知ることは驚きである。これまでの狂犬病の発生動向調査はイヌとコウモリに焦点を当ててきたので(www.baphiq.gov.tw)、遠隔地における症例は見過ごされてきた可能性がある。ただし、台湾は人口密度が高い島であり、36,188 km2の面積に2300万人が住んでおり、50年以上に亘って狂犬病症例が見過ごされてきたことはきわめて異常である。第二に、野生動物の最近の調査によると、イタチアナグマの頭数が過去5年間に増加している(L.-K. Linの私信)。したがって、イタチアナグマのRABVとの関係についての祖先の歴史にもかかわらず、頭数がRABV感染によって影響を受けていないと思われる事実は理解しがたい。

1匹のトガリネズミ(shrew)を例外として、台湾における最近の狂犬病流行の全てのRABV株はイタチアナグマのものである。同一地域で採取されたトガリネズミのRABVとイタチアナグマのRABVとの密接な関係は、おそらく前者が後者から溢れだした結果であることを示唆している(図5 B)。最も新しい狂犬病発生動向調査のデータによると、イタチアナグマは台湾における現在の流行でおそらく唯一のRABV保有動物である。このRABV株は台湾イタチアナグマに適応し、その中で長期間循環してきたという推察は理に適っている。種を超えて伝播する能力(たとえばイタチアナグマからトガリネズミ)は、さらなる研究の価値がある。

RABV-TWFBをその他のウイルス株と区別するRABV-TWFBの多数の置換の中で、G遺伝子のいくつかの置換(すなわち、N194YR196KおよびG203E)は注目に値するかも知れない。非病原性のRABVワクチン株であるSAD B19の一つのアミノ酸変異N194Kだけで病原性が増加することが証明されている。増加した病原性は、生体におけるウイルスの広がりの増加によって引起され、細胞内へのウイルスの侵入を早め(36)、その両者は、RABVの発病機序にG遺伝子が主要な役割を果たしているという見解に一致する。194の位置のアミノ酸NSに置換(N194S)した時、病原性が戻った(36,37)N194K置換の後ウイルスの細胞な侵入が早くなったことは、この領域が宿主細胞との結合に何らかの役割を果たしていることを示唆する。ニコチン酸アセチルコリンレセプター、神経細胞接着分子、およびp75ニューロトロフィンレセプターの筋肉型が、RABV結合のレセプターとして働き、細胞内侵入を促進するという強固な証拠がある(38,39)RABV-TWFBにおける上記の3つの置換は、ニコチン酸アセチルコリンレセプターへのGの結合に必要とされているこの領域(aa 189 and 214)に位置する(28)

 

イヌが関連したRABV113 G遺伝子配列についての我々の解析において、上記の位置にアミノ酸置換は認められなかった。コウモリが関連したRABV(40)120 G遺伝子の全配列において、G203にアミノ酸置換はなかったが、8 N194T (6.7%)2 N194S (1.7%)および36 R196K (30.0%)のアミノ酸置換が明らかになった。これわを合わせて考えると、RABV-TWFB13 G遺伝子全配列に見つかった3個のaa置換(N194YR196KG203E)は独特であり、さらなる研究に値する。

 

Chiou博士は、国立台湾大学獣医学部の病理学主任研修医でPhD課程にいる。彼女の主な研究課題には、野生動物と人獣共通感染症の発生動向調査と監視が含まれている。

 

謝辞(省略)

 

引用文献(省略)

 

訳注: 台湾イタチアナグマの間で100年余も狂犬病ウイルスが密かに循環していたという話は俄かに信じがたいが、本論文のデータを見る限りそうなのだろう。ただし、図5置換率に基づくウイルス株の近接する共通の祖先の推定方法や表3、表4の方法については私の理解を超えている。考察で挙げられているように、長期間循環していたのにこの数年で感染が見つかったことは、病原性が増したことを反映しているのだろうが、遺伝子の変異の部位についての考察も狂犬病ウイルスの専門家でないと理解が及ばない。

当初言われた「海外から野生動物が密輸され、病気になったので山に捨てた」という話はこの論文で完全否定されるのだろうか? 現在流行している株が、その他のアジア地域の株と別の遺伝子グループであることと、密輸説は両立し得るのではなかろうか? アジアのどこかで祖先が循環している可能性は否定できないのでは?