CDCによるインフルエンザQ&A

A型インフルエンザウイルスとその亜型

犬のインフルエンザについての基礎知識

動物における鳥インフルエンザの感染

 

A型インフルエンザウイルスとその亜型

CDC: Influenza Type A Viruses and Subtypes

(仮訳) 鹿児島大学 岡本嘉六

訳注: このQ&Aメキシコにお最近H7N3発生と関連して翻訳する。

 

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型の 3種類がある。ヒトインフルエンザA型とB型のウイルスは、米国では一般的に10月から3月に季節性流行を引起している。

 

野生の水鳥は全ての既知のインフルエンザA型ウイルスの自然宿主であり、とりわけ、カモ、ガチョウ、白鳥、カモメ、チドリ、アジサシなど特定の野生種が保有している。インフルエンザA型ウイルスは、ヒト、鳥、豚、馬、犬、海洋哺乳類、その他の動物に感染する。インフルエンザA型ウイルスは、ウイルス表面の2種のタンパク質、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)を基に亜型に分けられる。たとえば、「H7N2ウイルス」はHA 7蛋白質とNA 2蛋白質を持つインフルエンザA型ウイルスである。同様に、「H5N1ウイルス」はHA 5蛋白質とNA 1蛋白質を持つ。HAには17種類、NAには10種類の既知の亜型が存在する。HANAの様々な多くの組合せが可能である。インフルエンザA型ウイルスの既知の全ての亜型は、コウモリだけで発見されているH17N10を除いて、鳥に感染し得る。2種類のインフルエンザA亜型ウイルス(すなわち、H1N1H3N2)だけが、ヒトの間で現在一般的に循環している。いくつかの亜型は他の感染動物で見つかっている。たとえば、H7N7H3N8ウイルス感染は馬の病気を引き起こすことができ、H3N8ウイルス感染は犬の病気を引き起こす。

 

鳥インフルエンザウイルスは、ウイルスの分子特性および実験条件下での鳥の死亡率に基づいて、2種類(低病原性と高病原性)に分けられている。低病原性鳥インフルエンザA型(LPAI)ウイルスは、病気を起さないか軽度の症状(羽を逆立てたり、産卵率が低下するなど)であり、発見されないこともある。高病原性鳥インフルエンザA型(HPAI)ウイルスは、高い死亡率で重度の疾患を引起す。HPAILPAIウイルスは、両方とも、家禽群の中で急速に広がり得る。HPAIウイルス感染は、鶏の多数の内臓器官を侵襲し、しばしば48時間以内に90100%の死亡率をもたらす。ただし、アヒルは感染しても病気の兆候を示さないことがある。鳥だけに感染するものと、鳥とヒトに感染し得るもののインフルエンザAウイルスの亜型の間には、遺伝子と抗原性に違いがある。

 

鳥とヒトの両方に感染することが知られている鳥インフルエンザAウイルスの3種類の有名な亜型を以下に解説する。

 

インフルエンザA H5亜型

H5亜型ウイルスには9種類が知られている(H5N1H5N2H5N3H5N4H5N5H5N6H5N7H5N8およびH5N9)。全世界で野鳥や家禽で見つかっているH5ウイルスの大半は、LPAIウイルスである。アジアと中東において家禽の間で現在循環している高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウィルスのように、H5ウイルスの散発的なヒト感染は、15ヶ国で報告されており、しばしば重度の肺炎を引起し、世界平均で約60%の死亡率をもたらしている。

 

インフルエンザA H7亜型

H7ウイルスには7種の亜型が知られている(H7N1H7N2H7N3H7N4H7N5H7N6H7N7H7N8H7N9)。世界の野鳥や家禽で見つかる大半のH7ウイルスは、低病原性である。ヒトにおけるH7ウイルス感染は一般的ではないが、感染した鳥、とくに家禽におけるH7ウイルス発生時に直接接触したヒトの事例が報告されている。ヒトの病状には、結膜炎や気道症状が含まれる。ヒトにおいて、低病原性鳥インフルエンザウイルス(H7N2H7N3H7N7)は軽度から中等度、高病原性インフルエンザウイルス(H7N3H7N7)は中等度から重度および致命的な病気を引起す。

 

インフルエンザA H9亜型

H9亜型ウイルスには9種類が知られており(H9N1H9N2H9N3H9N4H9N5H9N6H9N7H9N8およびH9N9)、世界の野鳥や家禽で見つかる全てのH9ウイルスは低病原性である。H9N2ウイルスはアジア、ヨーロッパ、中東およびアフリカの鳥集団で検出されてきており、ヒトの散発的H9N2ウイルス感染が一般的に上部気道に軽度の病気を引き起こすことが報告されている。

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犬のインフルエンザについての基礎知識

Key Facts about Canine Influenza (Dog Flu)

訳注: このQ&Aは、日本では十分に知られていない2004年フロリダにおける競技用犬のH3N8亜型集団感染を紹介するために翻訳する。

 

犬のインフルエンザとは何か?

犬インフルエンザは、「犬インフルエンザウイルス」と呼ばれる特定のインフルエンザA型ウイルスによる犬の伝染性呼吸器疾患である。これはヒトの病気ではなく、犬の病気である。

 

犬インフルエンザウイルスとは何か?

「犬インフルエンザウイルス」は、本来馬インフルエンザウイルスであったインフルエンザA H3N8ウイルスである(ヒトインフルエンザウイルスではない)。このウイルスは、既に犬に広がっており、犬の間で現在も広がり得る。

 

犬インフルエンザはどの程度続いているか?

H3N8馬インフルエンザウイルスは、40年以上も馬に存在していることが知られている。ただし、2004年に犬に原因不明の呼吸器疾患症例が報告された(最初はレース用グレーハウンド)。調査によって、この呼吸器疾患は馬インフルエンザH3N8ウイルスによって引起されたことが判明した。科学者は、このウイルスが種の壁を越え(馬から犬へ)、現在は犬の病気として定着し、犬の間で効率的に広がっている。これは、H3N8の新たな犬特有の系統と見做されている。20059月には、米国において専門家によって「新たに発生した犬の病原体」として特定された。

 

感染した犬の症状はどのようか?

犬におけるこの病気の症状は、咳、鼻水と発熱であるが、一部は重度の病気を引起す。

 

感染した犬はどのように深刻か?

この病気に感染して死亡した犬の数は非常に少ない。ある犬は無症候性感染(症状がない)であり、ある犬は重度の感染症に陥る。重度の症状は、肺炎の発症を特徴とする。これは新しい原因による犬の疾患であり、ほぼ全ての犬が感染し得るが、約80%は軽症に終わる。

 

犬インフルエンザはどのように広がるか?

犬インフルエンザウイルスは、感染犬の気道分泌物と直接接触、汚染物との接触、感染犬と非感染犬の間のヒトの移動によって広がり得る。したがって、犬の所有者は犬が咳やその他の呼吸器疾患の徴候を示している場合、他の犬がウイルスに暴露される恐れがある催しや施設に連れ出さしてはならない。呼吸器疾患の徴候を示している犬に触った後は、衣類、機材、表面および手指は洗浄・消毒しなければならない。

 

犬インフルエンザの検査法はあるのか?

犬インフルエンザウイルス感染を確認する検査は、獣医療診断センターで利用できる。検査は、発症時に採取した気道分泌物を使用するか、または病気の間とその23週間後に採取した血液サンプルを用いて行われる。

 

犬インフルエンザはどのように治療するのか?

治療は主として対症療法からなる。これは、犬の免疫応答を高める助けとなる。比較的軽い症例では、犬を楽にするための投薬と十分な水分を確保するための補液が行われる。細菌の二次感染が疑われる場合、獣医師によって広域抗生物質が処方される。

 

犬インフルエンザに対する予防接種があるか?

承認されたワクチンが利用可能である。

 

このウイルスに対するヒトのリスクは何か?

これまでに、犬インフルエンザウイルスが犬からヒトへ伝播した証拠はなく、ヒトが感染した1例の報告もない。このウイルスは犬に感染し、犬の間で広がるが、ヒトに感染する証拠はない。

ただし、新型のインフルエンザウイルスのヒト感染は、ヒト集団ではそれに対してほどんど免疫がないことから、そうした事態が起きることが懸念されている。インフルエンザウイルスは常に変化しており、ヒトに感染し、ヒトの間で容易に広がるようにウイルスが変化することも可能である。そのようなウイルスは、インフルエンザ世界流行の脅威となり得る。このため、CDCとその協力者は。H3N8インフルエンザウイルス(その他の動物インフルエンザウイルスとともに)に暴露された可能性がある人々について詳細に検査している。ただし、犬インフルエンザウイルスはヒトへの脅威が低いと一般に考えられている。先に述べたとおり、これらのウイルスは馬と犬の集団に広く定着しているが、ヒトの間でこのウイルスに感染した証拠はない。

 

私の犬が咳をしているが、何をすべきか?

あなたの犬を診断でき、適切な治療を勧めてくれる掛かりつけの動物病院に予約する。

 

犬インフルエンザウイルスに関するもっと詳しい情報はどこにあるか?

犬インフルエンザウイルスのより詳細な情報は、新興感染症誌の「フロリダにおける呼吸器症状のある犬のインフルエンザAウイルスH3N8亜型(Influenza A Virus (H3N8) in Dogs with Respiratory Disease, Florida)」から得られる。

 

関連するリンク

CDC:ペットの健康とヒトの健康(CDC Healthy Pets Healthy People

米国獣医師会(American Veterinary Medical Association

       Control of Canine Influenza in Dogs; Q&A

救護獣医師協会(Association of Shelter Veterinarians

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動物における鳥インフルエンザの感染

CDC: Avian Influenza Infection in Animals

訳注:このFAQsはネコ科動物のH5N1感染例が報じられた直後に書かれたもので、2006年以降改定されていない。それは、新たな情報がそれほど多くないことによるもので、そのこと自体が「感染した家禽の生肉を給餌する事例がなくなった」ことおよび「感染した家禽の生肉の給餌以外に、ネコ科動物の感染経路がない」ことを意味する。したがってこのFAQsはお蔵入りしているが、リスクコミュニケーションの歴史的資料として翻訳する。

 

どんな動物が鳥インフルエンザA (H5N1)ウイルスに感染し得るか?

ヒトと鳥に加えて、豚、トラ、ヒョウ、フェレット、猫が鳥インフルエンザA (H5N1)ウイルスに感染し得ることを我々は知っている。さらに、20063月上旬、ドイツはムナジロテンstone marten、イタチに似た哺乳動物)のH5N1感染を報告した。2003年にアジアで発生した鳥インフルエンザA (H5N1) ウイルスは、進化し、その他の哺乳類も感受性がある可能性が出てきた。CDC は、国内外の協力者と密接に協力してこの状況を継続的に監視しており、追加情報が得られ次第国民に提供している。

 

家猫は鳥インフルエンザウイルスに感染し得るか?

猫はインフルエンザA型に通常感受性がないけれども、(実験的および自然状態で)鳥インフルエンザA (H5N1)ウイルスに感染して死亡するし、このウイルスが研究所で他の猫に広がることが知られている。自然条件下において猫が他の猫にこのウイルスを拡散することができるかどうかは不明である。

 

家猫はどのように鳥インフルエンザA (H5N1)ウイルスに感染するか?

猫におけるインフルエンザA (H5N1)感染の症例の全ては、これまで家禽や野鳥のH5N1発生と関連して報告されており、感染した生の鳥を猫が食べることによって発生したと考えられている。

 

家猫が鳥インフルエンザA (H5N1)ウイルスにどの程度感染しているか?

アジアにおいて2003年から2004年に発生した鳥インフルエンザA (H5N1)の発生中に、猫の致命的な感染のいくつかの非公式な報告があった。オランダで実施され、2004年に公開された研究は、猫が鳥インフルエンザA (H5N1)に感染し、他の猫に広げ得ることを示した。それらの実験では、致命的なヒトの症例から分離されたウイルスの直接接種、ならびに感染した鶏の摂取後に猫は病気に罹った。20062月に、猫がインフルエンザA (H5N1)によって死亡したことがドイツから報告された。その猫は、リューゲン島北部に住んでいたが、そこでは100羽以上の野鳥がこの病気で死亡したと信じられている。その猫は、おそらく感染した鳥を食べて病気になった。

 

トラのような大型の猫科動物における感染について何か分かっているか?

飼育されている大型の猫科動物も鳥インフルエンザ感染と診断されている。200312月に、タイの動物園において食肉処理場から供給された生の鶏と体を与えた2頭のトラが死亡した。調査によって、組織サンプルに鳥インフルエンザA (H5N1)が確認された。20042月と3月に、このウイルスは、バンコク近郊の動物園で死亡したウンピョウとホワイトタイガーからこのウイルスが検出された。200410月には、タイの動物園において生の鶏を与えた後で感染の結果として441頭中147頭飼育トラが死亡または安楽死させた。猫科動物は感染した生肉を食べることによって病気になると考えられている。その後の調査の結果、その施設ではトラからトラへの伝播が少なくとも数例発生していたと推定されている。

 

鳥インフルエンザA (H5N1)ウイルスに感染した猫によるヒトやその他の動物のリスクはどうか?

猫がH5N1をヒトに広げ得るデータは、これまでに証拠がない。ヒトにおける鳥インフルエンザの症例はどれも、病気の猫との接触、あるいは報告された猫集団における流行とも関係していない。これまでに報告された猫集団におけるインフルエンザA (H5N1)感染の全ては、家禽や野鳥の流行と関連しており、感染した鳥に由来する生肉を食べたことで発症した。

 

米国において猫が鳥インフルエンザA (H5N1)に感染する現在のリスクはどうか?

米国においてインフルエンザA (H5N1)が存在しないので、米国の猫がこの病気に感染するリスクはない。アジア、欧州およびアフリカで循環しているこのウイルスのは、まだ米国に侵入していない。CDC は、国内外の協力者と密接に協力してこの状況を継続的に監視しており、追加情報が得られ次第国民に提供している。

 

米国で鳥インフルエンザA (H5N1)が検出された場合、どのようにすれば私の猫を護れるか?

米国にH5N1インフルエンザがない限り、現時点で米国の猫がこの病気に感染するリスクはない。ただし、野鳥、家禽、数頭の猫およびムナジロテンstone marten、イタチ科)においてH5N1が報告されている欧州において、欧州疾病予防管理センター(ECDC)はH5N1発生地域に住んでいる猫の所有者に暫定的勧告を出している。さらに、FAOは家禽または野鳥にH5N1 HPAIが確認または疑われている地域に対して手引きを作成している。

 

猫の鳥インフルエンザ感染についてのさらなる情報はどこにあるか?

猫の鳥インフルエンザ感染についてのさらなる情報は、米国獣医師会の「Avian influenza — Frequently asked questions」を参照してください。

 

犬は鳥インフルエンザウイルスに感染するか?

犬は鳥インフルエンザウイルスに一般的に感受性がないけれども、アジアで 2003年に発生した鳥インフルエンザA (H5N1) ウイルスは他の肉食動物種(猫、トラ、ヒョウ、ムナジロテンなど)に感染することが報告されている。これによって、鳥インフルエンザA (H5N1) ウイルス株が犬に感染し得る懸念を生んでいる。バンコクの国立動物衛生研究所で2005年に行った未発表研究は、犬はこのウイルスに感染する可能性があるが、関連する病状は認められなかったことを示した。この限定的情報は、犬がこのウイルスに感受性があるかどうかを最終判断するには不十分である。CDCは、米国農務省、獣医師会およびその他の国内外の協力者とこの件について連携しており、追加情報が得られ次第一般に提供する。

 

犬は鳥インフルエンザA (H5N1)にどのようにして感染するか?

犬がどのように感染するかを知るための犬における鳥インフルエンザA (H5N1)感染について利用できる十分な情報がない。欧州で感染した猫は、感染した家禽や野鳥の生肉を食べたことによって感染したと思われる。犬が鳥インフルエンザA (H5N1)に感受性があるとすれば、感染は同じ経路で起きるかも知れない。

 

米国の犬が鳥インフルエンザA (H5N1)に感染する現在のリスクはどうか?

米国においてインフルエンザA (H5N1)が存在しないので、米国の犬がこの病気に感染するリスクはない。アジア、欧州およびアフリカで循環しているこのウイルスのは、まだ米国に侵入していない。CDC は、国内外の協力者と密接に協力してこの状況を継続的に監視しており、追加情報が得られ次第国民に提供している。

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